掃除、してますか?

建物管理者向け、悩ましい管理方法のヒントここにあります。

外部委託の信用失墜

掃除、してますか?

こんにちは。これをかいている今日は敬老の日です。

朝、外に出てみたら避暑地に来たような空気感でした。車が少ないからでしょうか、いい空気です。綺麗な空気は気持ちいいですね。何事も綺麗な事はいいことです。

 

今日のタイトルは外部委託についてです。

一般的にお掃除や設備管理の業務は外部委託するのが多いと思います。

専門性や生産性を考えるとそのほうが効率的だからです。

パソコンで仕事をする人たちが、つきにい一度床洗浄を強要されたら品質はおろかけが人まで出そうですし、マネージャーがボイラーソルトの補充を行っていたら水質に問題が生じて壊れそうです。

 

ビルの管理はほぼ「ビル管法」の要求によって組み立てられています。このことをご存じない発注者の方は意外に多いです。

ビルや一定のエリアを有して会社を運営する立場の人は、その環境を衛生的に維持しなければなりません。それが集客施設であればなおさらです。法律ではそういった人が集まる場所は特に厳しく管理することを求めています。

ですから、出したくも無いコストをかけて外部の掃除屋なんかに仕事を出さなければならないのです。

言い方が悪くなりましたが、発注者さんは総じてそう感じておられると思います。

「必要でもない、お金を生むでもない、至極簡単な作業に、自分たちが汗水たらして稼いだお金をかけられない」こんなふうに思っています。

掃除をして綺麗にすることで事務所が活発になって士気が高まり、生産性があがるという考え方はありますし、アメリカの企業などは働く環境と生産性を科学することでちょっと知られています。

しかし、掃除すると儲かる。ということはありません。

現在の日本では、直接儲かること意外にお金をかけてまで環境改善なんかする会社はありません。あっても超少ないでしょう。

しかし、特別管理(集客施設)が要求される建物の維持管理には必要であることは間違いなく、衛生管理や設備管理の高い技術力が不可欠だし、なんならそれこそが集客施設のもてる力であるといっても過言ではありません。

いかに快適で、いかに衛生的か。

このワードは本来はずせません。

しかし、主客施設の主たる目的である野球観戦や映画鑑賞、お買い物といった事業に直接的に環境は含まれていません。もちろん良いに越したことはないし、発注者も来場者も「あたりまえ」だと思っていることでしょう。

ちょっと脱線しますが、得意のディズニーが評価されて久しいのはカストーディアルキャストの存在です。また、あまり知られていませんが後方を守るキャストの存在。

かのテーマパークはほぼビルメンの活躍によってゲストの期待に応えていると言ってもいいでしょう。あの環境を作り出すためのコストは半端な額ではありません。

 

さて、外部委託とコストの関係です。

現在、日本の企業はみんな不景気です。そうじゃなくても不要な経費は削減しないといけません。そこで簡単に清掃費や管理費を削ります。ビルメン諸氏はみんな困る。

こんなことがだいたい今のビルメンを取り巻く環境ですよね。

ある大手ビルメンの経営者の方にお話を伺う機会がありまして、そこんところ聞いてみたんです。

社長曰く、「掃除屋なんかやってても駄目ですよ。この仕組みで儲けようと思ってももう無理でしょう。」

そうおっしゃって、多角経営のお話をされました。実際、いろんなビジネスを始められていて、さすが経営者は違うなと感じました。

お話の内容をわかりやすくするとこうです。

「掃除を発注している会社さんもみんな不景気で、我々も過当競争に陥っている。価格を下げれば成り立たないし、高ければ他にとられる。やり方や技術力、規模なんかが足りない小規模企業さんの現場はまだ埋蔵金が眠ってることがあるため、そういう企業さんが倒れそうなとき、我々が一緒にやり直すことでお互いの利益を確保するような仕組みでやってきた。所謂M&Aですね。しかし、これをやると自分の規模がどんどん膨れてしまい、システムや管理が追いついていかない。そのシステムに数億のコストをかけて立て直してみたら今度はそのコストを現場に求めなければならない。我々も必死なんですよ。もう掃除ではやっていけない。」

 

ビルメンが窮地に追い込まれていることはわかります。

では発注側のお話はどういった感じでしょう。

僕の立場はビルメンをやりながらも発注側の立場ですから、この理屈はよく知っています。

営業がお金を稼ぎ出すわけですから、企業内では志向の立場となっていることが多いようです。その中でも売れる商品を扱うポジションの社員は「ポジションバリュー」という格差によって優遇されます。野球場でいくらビールを売っても、企業枠で座席を売っている社員には敵わないって言うことのようです。

不景気になる前は、掃除の発注は「品質とコストの科学」を行うことで、いかに適正に良い状態を維持できるかを考えていました。しかし、いろいろな事情で「いかに減らすか」だけがミッションになってきました。業者さんに仕様減を告げ、コスト計算をお願いします。僕は現場でコスト計算は得意ですから、割に合わない計算が出てくると文句を言いますし、出来ないレベルの減額案が出てきてもおかしいので問い合わせます。

問題はここです。

普通の担当者さんは総務部庶務担当のマネージャーさんでしょう。

モップの絞り方や自動床洗浄機の能力、リース料金、素材別の作業時間など、詳しい分析は出来ないでしょう。

僕は現場の評価をするとき、朝の清掃現場に立ち会ってそれぞれのワークと一緒に歩いてみたり、定期清掃時の腕前を確認したり、フロアを洗浄機で回ったらどういうルートが好ましくていい結果を出せるかなど、出来るだけ詳細に現場をチェックします。

そうやってコストの算定を行っておかないと、無理な入札を受けてしまいますし、高額な請求を受けてしまったりします。

普通の発注者さんはこれを行わないし、出来ないでしょう。

なにも「俺すごい」と自慢をしたいわけではないんですが、ここにたくさんの問題が含まれているんです。

先に書きました「専門性」が祟って、他人事になってしまっているのです。

そして、お互いの立場の相違から相手を裏切ることになっている。

・おいしいと評判のお肉屋さんだから大丈夫だろうと信用したら、ダンボール入りの餃子を食わされた

・世界のマクドナルドだから大丈夫だろうと信じていたのに、鶏肉の扱いがひどかった

コストの壁というのは限界があるのです。

 

ある現場に「インスペクション」という名の視察に入りました。

業界で言うそれとは違い、仕様書をまもり約束を果たしているか、品質を生み出せる能力を有しているかチェックに入ったのです。

ここからはよくある話だと思います。

拝見したのは、ある地方のデパートです。

開店前の清掃で全体を掃除します。

エスカレーターの担当が2人、ツールは雑巾と自在箒だけでした。

トイレのスタッフはゲストが手を洗う水石鹸で洗面器をこすっていました。洗剤はもらえないそうです。

通路をバフがけするスタッフはベテランです。しかし維持剤は無くなっていて、タイルがむき出しでした。

催事場の天井にたまった埃が排気口を塞いでいました。

もう、何を見ていいのかわからないほどひどい現場でした。

作業計画表に仕様書が割り当てられていませんでした。

作業計画表の予定通り人数がいません。

仕様書の作業量の半分もやれていませんでした。

コストはどうか。

仕様書を計画表に落としこんで、人数や定期清掃を計画すると「安い」ことがわかります。

発注担当である総務部の課長さんに「やられてます」と報告しましたが、社内で自分のミスを発表するわけも無く、僕の視察は無駄に終わりました。

これが現実でしょう。

コストと実際のずれに気づけないことは、せっかくお金をかけて委託していることの意味を殺してしまいます。

なんなら僕が視察して、判断しますのでお声掛けください(笑)

お金を固定してくれても、最大のパフォーマンスを出せば良く、品質を固定されても最低限のコストに抑えれば言いだけの話です。

 

外部委託先の中身が腐っていると、だまされてしまいますね。

掃除屋の経営者も必死なんです。

過当競争に勝ってせっかく手に入れた現場で稼がなければなりません。

しかし、嘘をやって品質度外視の現場管理を行っていてはいけません。詐欺行為です。

 

発注者さん、コストを下げたいミッションは理解できます。

しかし「必要経費」というのは「必要」だから存在するのです。

不衛生な環境で商売しようというのならそれもいいでしょう。

相手を信じなくてもいいです。いつかそちらさまが信用を失うことになるのです。