やらせない
掃除、してますか?
今年は大型の台風が次々押し寄せて本当に大変です。
被災すると片付けなければならない仕事が大量に発生しますが、これのほとんどは清掃です。たかが清掃、されど清掃ですね。
さて今日は「やらせない」というテーマにしました。
視察していると、現場毎にいろんな常識があってそれぞれの理屈があるんですが、いつも心に隅に引っかかってしまうこの「やらせない」がつきまとってきます。
こんなことがありました。
地方のある大型商業施設の視察をしていたときのことです。
担当の主任さんにお断りして、朝から現場に入りました。商業施設ですから入館手続きなどは事前にお願いしておかないと入れないので、前日から乗り込んで昼間の状況を確認しておいて、入館などの手続きをお願いしています。
しかし、当日の朝入れないんです。防災センターの警備担当に身分を名乗ってあちこち電話してもらい、なんとか入館。危うく出張初日を棒に振るところでした。
自分たちの仕事ぶりを偵察にこられたんですから、邪魔したい気持ちはわかります。でもそこは発注者にお願いして入り込みました。
まずは出勤の様子を見てみます。
慣れた様子のスタッフが次々に出勤してきます。見慣れない私がバインダーなんかもって立っているから、新人と勘違いして声をかけてくれる人もいました。(なんと暖かいんだろう)
資材置きばに向かうスタッフを眺めていると、やはり一番多いのはトイレのスタッフのようです。
それぞれ雑巾などが入っているバスケットを手に現場に散っていきました。
エスカレーターの担当は直行のようです。
トイレの一人についていきました。
慣れているようで、動きに無駄がありません。すし屋の握りを創造するような流れる動作、素敵ですね。
しかし洗面器を清掃するその人がなかなかそこを離れないんです。
「Aさん、だいぶ汚れているんですか?大変ですね」
「いえね、本当はこんなこといたらいけなんですけど、これ家から持って来てみたんですよ」
そういって見せてくれたのは台所の洗剤でした。
・・・・・
「所長の指示通りにやってるんですけど、それだとなかなか落ちなくて時間が足りなくなっちゃうでしょ。だから内緒ですけどこれ使って見たんですよ。この汚れ、なんでしょかね?口紅みたいですけど、なかなか落ちなくて・・・・」
「え、専用の洗剤無いんですか?」
「ええ、所長はこの雑巾でごしごしがんばって落とせというんで、頑張ってるんですけど、こういうのはなかなか落ちないんですよ」
「・・・・・」(驚愕の事実に大きな口をあけて固まってる)
「すいません、ここはあとでまた掃除しにきますから、次に行きますね。おわらなくなっちゃうんで・・」
こういうとAさんは隣のトイレに向かいました。
明らかに口紅でしたが、まさか洗剤を使わないという・・・・・
のちに会議でこの件を確認して見ると、トイレ掃除で洗剤を与えると、間違えて事故になることが多いのでそうしているといいます。
こすってた雑巾も、硬いスポンジを与えると傷を付けてしまうことが多いから使わせないんだそうです。
エスカレーターの道具もほぼ雑巾でした。
ここは10年前の中国か?
もちろん指導して改善提案は行いましたけど、直るとは思いませんでした。
人の教育やマニュアルが重要だといつも話していますが、これほどまでに全否定されていた現場があったとは驚きました。
出来ないから教えるのではなく、出来ない人にはやらせないんです。
教える人が教える仕事もやらせない。会社は従業員を雇用して仕事を与えますよね?やらせるのが普通だと思ったんですけど・・・
愚痴になってしまいますが、本当のことなんです。
昼の清掃を点検して、町にある100均でクレンザーを購入。翌朝Aさんがまた同じ洗面器をこすっているところにいって、僕が直接清掃して見せました。
なぜ、効果的な方法をやらせてもらえないのかも教えておきました。
Aさんはそのクレンザーを欲しがりませんでした。なぜなら「所長に叱られるから」
後味の悪い現場でしたが、こんなことが現実でしょう。